早朝5時過ぎにホテルを出発。
ウバーを使ってケンジントンからポートベローに来ました。
もう空は薄明るくなっていて、雲の向こうから光が漏れています。
まだ、通りには露店も並んでおらず、これから露店のブースを作るための木材を運んできたトラックが停まっています。
ポートベローやバーモンジーなどの露店はマーケットが開かれる日だけブースが作られます。テーブルやブースを形作る木材や骨組みの鉄がトランクから降ろされていきます。
私は朝早くから開いているジュエラーが集まってビルディングに向かいます。通りにはほとんど人影がない中、すでに、ここだけは多くの現地のディーラーで賑わっています。
コロナ前に開いたこのビルには、コロナを機会に多くのジュエラーがこちらに移ってきました。6月に来た時よりもさらにディーラーが増えています。
まだ、5時半ころというのに、買い手と売り手でビルの中は賑わっています。もちろん、混雑はしていますが、誰もマスクはしていません。
前回、6月に来た際にも既にほとんどマスクを付けている人は見当たりませんでしたが、日本も早くこうしたかつての日常に戻ってほしいです。
初出しの品を求めて、地方から来たディーラーのスタンドに人が群がります。荷を解いて、商品を箱から出すとすぐにあちこちから手が伸びます。
値段を聞き、少し考えて商品をチェックし、取り置きを頼んでいきます。
私もイギリス人のディーラー達に混ざり、手を伸ばしながら、物色していきます。他のディーラーが選んだ商品で価格を尋ねているのに耳を傾けると、結構高い値段を言われています。
それでも次々に現地のディーラーたちは買っていきます。
混雑もひと段落し、改めて値段を尋ねるとどれも結構いい値段がします。
つい、早朝の初出しだから安い物があるかと、周りの雰囲気に飲まれ、買ってしまうと掘り出し物を買おうという欲からか、高買いしてしまいそうになります。
始めた頃は何年もこのせわしい雰囲気に流され、早朝に焦って買ってしまったことが何度もありました。
ホテルに帰り仕分けをしていて、修理の後に気付くことや思ったよりも高く買ってしまったことに打ちのめされたことが何度あったことでしょう。
それでも、つい見たくなってしまうのがこの仕事の魔力です。
いつもはロンドン市内や他のフェアを回り、数日目にポートベローに入ります。けれど、こうして初日から入ると感覚が慣れておらず、値踏み感やチェックが甘くなることがあるので注意しなければなりません。そう自分に言い聞かせて慎重に選んでいきます。
そろそろ6時になるので以前からあるジュエラーが集まるビルに向かったのですが、やはりまだ空いていません。前回来た時にオープンが6時から6時半に代わったということでした。また、隣のもう一つのビルも7時に変更されたということでしたが、やはり、まだ空いていません。
以前は5時から7時の間にかなりの商品を集めていたのですが、ディーラー達も出てくるのが遅くなっているようで、以前のようには計算通り運びません。
7時が近づいてきたので、ポートベローロードの入り口近くにあるロジャースギャラリーにも行ったのですが、ここはメインルームが閉鎖され、以前の規模の3分の1ほどになってしまいました。
イギリスでのコロナの影響が終わりつつある現在、そのメインルームも以前のように戻ってほしいという希望もありましたが、出店しているディーラー達の話では、「もう終わった。これからも戻らないよ。」ということでした。
やはり、コロナにより、この2年でアンティーク業界は一挙に10年以上の時が進んでしまったようにマーケットの縮小が身に染みて感じられます。
それでも、何とか商品を集めるしかありません。
ジュエラーが集まるビルに戻ると、これまでポートベローに出店していなかった新たなディーラー達が出店しています。古くから続けているディーラー達とはまた異なった品揃えです。
地方のオークション等で集めてきた品が中心なのでしょう。商品を見ていると、どういったところから仕入れてきたか感じ取れます。
ヴィクトリア時代以前の物は少なく、エドワーディアン期以降の物が中心で1960年代頃の物まで置いている店が目につきます。
アンティーク業界でもその時々によって流行があり、今はアールデコから20世紀半ば頃までの華やかなジュエリーが欧米では人気が出てきているのでしょう。
それは、一方で見方を変えると、19世紀以前のジュエリーが減ってきており、ディーラー達も取り扱う品を変えてきているとも言えます。
結局、顔馴染みのディーラー達から安く仕入れられたものを以前とほぼ変わらない値段で譲ってもらい、何とかポートベローで集めようと考えていたアイテムは揃えることができました。
次は、コインフェアに向かいます。