クリニャンクール

地下鉄クリニャンクールの駅から外に出るとロンドンよりも寒い気がします。

 

前回、11月に来た時は雨だったので、それに比べれば辛い寒さではありませんが。

この冬、日本では暖冬であったため、久しぶりに冷たい空気が首筋を抜け、自然とコートの襟を立てました。

それでも耳が寒いです。

ホテルにマフラーを置いてきてしまったのが悔やまれます。

 

今回は二軒ほど事前に日本から電話をしておき、アポイントを取っておきました。

 

折角訪れたのに目的の業者に会えなかったら収穫もありませんから。

 

特にクリニャンクールのジュエリーを取り扱うショップは店ごと値段が全然違います。

以前に、何度かほぼ全てのショップを歩いて回り値段を確かめていったことがあります。

 

その後、最近は決まったお店だけアポイントを取って回ることにしていました。

 

どうしてもイギリスでのフェアの日程を優先するため、ここ最近は土曜日や日曜日にクリニャンクールを訪れることができませんでした。

 

平日に訪れると空いているお店も少なく人通りもなく寂しさが漂っています。

 

それが今回日曜日に訪れたら通りには多くの人がおり、賑わっています。

もちろんほとんどのお店が開いており、明るい雰囲気。

こうしたクリニャンクールを目にするのは久しぶりです。

活気があって嬉しくなりました。

 

いつも行くレストランを覗くと満席。一席も空いていません。

 

約束してあったお店に行くと、なぜか中に先客がいます。

 

このお店のオーナーはお客がいると他の客はいれないために、鍵をかけて一対一でしか接客しません。

 

その性格が解っているので仕方なく近くのお店を回ってみることに。

平日には開いていない店もこの日は空いているのでいろいろと見て回り、値段を聞いてみます。

しかし、どこもイギリスよりも高いです。

そのため無理して買うのは辞め、先ほどのお店に戻ってみると、全て終えてもう先客はいなくなっていました。

 

「さっきいたのはジャポネかい?シノアかい?」

「ジャポネだよ。」

「そっかぁ中国人じゃなくて日本人かぁ~」

やはり皆この店が安いということは知っていますね。

 

それでも約束をしていたので買ってきたばかりの新入荷の品を取っておいてくれました。

机の下からまだ値段を付けていない品々が現れました。

 

その中からいくつかを選び購入させてもらうことに。

この店は20年以上前の相場でアンティークを譲ってくれる数少ないところです。

それでも最近は金の値段が高騰しているため、18金製のものが多くを占めるフランス製のゴールドジュエリーは値段が高くなってきているのを感じます。

 

しっかりと物を選ばなければなりません。

 

また、壊れているものや修理してある物多いです。

私が手に取って商品を返すと

「なんでだ?どこか壊れているのか?」

とよく聞かれます。

 

「ここに直しがあるじゃん」と言うと

「ああ、そうか」

どうやら見えていないようです。

それはそうでしょう。

歳を尋ねると私の母と同じ歳。

70歳を越えるベテランですから、それは眼も弱くなっているはずです。

納得です。

 

慎重に選び四点ほど購入することにしました。

 

中央にオールドヨーロピアンカットのダイアモンドが輝き、その周囲をローズカットダイアモンドをぎっしりと敷き詰められたスプレーブローチ。

 

月の満ち欠けを表現した優美なブローチ。

 

ロケット状の構造になった装飾が豊かなシール。

 

強い輝きを放つダイアモンドのブローチなど。

このブローチは留め具がねじ式で外せることから部品を交換することにより恐らく髪飾りとしても使用することができたのでしょう。

 

次回来る予定を伝えて店を後にしました。

後何年こうし
てお店を続け私を迎えてくれるのでしょうか。

店主の健康を祈るばかりです。

 

その後、次の店に向かいます。

ここはいつも約束してあっても来ていません。

やっぱり今回も、3日前に電話をしていたにもかかわらず閉まっています。

灯りはついているので、どうやら昼食にでも出ているのでしょう。

電話をかけると

「すぐに行くよ~。」との応えが返ってきました。

 

5分ほどで笑顔で現れました。

 

サバ、サバビアン

と挨拶を交わし、中へ入れてもらいましょう。

 

ここを訪れる三日ほど前に日本の美術協会で彼らの話が出ました。

その時の話をし、大会後の宴会の写真を見せると、

「ああ、この前来たよ。○○。」

「○○も。」

「そうなんだぁ。最近も○○大先輩たちも来てるんだね。」

「○○かぁ懐かしいなぁ」

「元気にしているか?」

などと話が弾みました。

 

フランス、イギリス、日本。どこも狭いものです。

アンティークを愛するディーラーたちはやはり皆どこかで繋がっています。

 

ここでは美しいラリックのブローチやペンダントなども譲ってもらいました。

ブローチはフォイルバックになっており、光が当たると不思議な紅色が浮かび上がります。

 

ブローチは製作数残存数が少ないため出会った時には値段が合うならば買っておきたいアイテムです。

 

荷物を預けて残りの時間、他のお店も回りましょう。

たまには丹念に回ってみると掘り出し物もあるかもしれません。

 

今回は工芸品はもう買ってしまいスーツケースがいっぱいになってしまいました。

そのため、ジュエリーに絞って見ていくことにしてみます。

 

良い物があれば躊躇なく店に入り、値段を聞いていきます。

日本と違いどのお店もほとんど値札は付いていません。

付いていても見えないよう伏せてあります。

 

若い時はいちいち聞いて回るのに一歩踏み出しにくかったのですが、今はどこでも尋ねます。

イギリスのアンティークマーケット違い、クリニャンクールは店舗になった形態が多く、

ドアを開けて入らなくてはならない所もあります。

そうなると入りにくい物でした。

 

今は自分の目利きに自信がついたのと高くとも値段が適切ならば購入できる力も少しはついてきたので躊躇することが無くなったのかもしれません。

 

そうこうと回っているうちにピリッと光る物たちが溢れているお店に行き当たりました。

工芸品はどれもセンスが良く状態も良いです。

大きな店で家具からガレやドーム、ラリック、ランプ、ジュエリーまでいろいろと置いています。

 

値段を聞くと安くも高くもない相場の値段です。

わざわざ持って帰るのを考えると今あるもので十分かとも思ってのですが、

幻想的な光をたたえるペンダントが目に入りました。

値段を聞くとやはり相場の値段。

相手も良く分かっています。

「ありがとう」と、返すと、

「いくらなら買うんだ?」

と尋ねてきます。

まぁ難しいだろうと思いながらも残っていた現金の金額を伝えると

「うーーん。OK」

「本当?」

「いいよ、君プロだろ」

「聞いてくるものが違うからわかるよ」と言われました。

「今回は初めての取引だから特別だよ。また来てくれよな。」

気前のいい奴です。

話していると日本やアメリカ、イギリスなどのディーラーにも詳しいです。

私よりも若いにもかからずこの大きな店のオーナーだそうでヤリ手でしょう。

商売を繋げるため相場よりも大幅に安くとも提供する。その心構え自分にも共通するものを感じました。

 

「次回はしっかり現金用意してくるよ」

と伝えお店を後にしました。

 

クリニャンクールもたまには歩いて回ってみるものです。

次回は平日に来るかまた週末に来るか迷うところです。


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