水曜日、友人の新居にお邪魔することに。
大学を卒業後、クリスティーズで学んだ後、一人骨董屋をはじめ、今では和骨董、中国骨董のヨーロッパマーケットを制しビックディーラーとなった日本人がいます。
お子さんも生まれ、今やイギリスを訪れる東洋骨董を扱う日本人、中国人のディーラーでは知らない人はいなくなった彼。
そんな彼の家で仲間のディーラーたちとお茶の時間を楽しませてもらいました。
会うたびに大きくなり、驚かせてくれる息子さん。早くも三ヵ国語を操ろうとする驚異の二歳児です。
ちなみに英語、日本語、中国語です。
その息子さんを中心に皆で日本のお菓子や中国茶を片手に談笑。
その中で興味深い話がありました。
ヨーロッパ各地で買い付けている彼の話によると、ドイツで骨董品の持ち出しができなくなりそうだということです。
100年以上前の物を持ち出し禁止にする法律が施行されそうだとのことでした。
そのため、ドイツの大手オークション会社にはオーストリアなどに支店を出す動きが出てきているそうです。
この流れになればマイセンなどの陶磁器に類の動きにこれから変化が起きるかもしれません。
翌朝、いつも通り、4時に起床。
この日は一日が長くなりそうです。
日本からの連絡に返事をし、バナナとオレンジをお腹に入れておきます。
5時15分部屋を出発。
馴染みのクルド人ドライバーが運転する車でキングスクロス駅に向かいます。
早朝のため、道にはほとんど車通りもなく、スムーズに駅に到着。
キングスクロス駅は半ドーム状のような天井になっており、冬は風が抜けるようで寒いですが、季節の良いこの時期はLEDでライトアップされた天井がきれいに感じます。
予約しておいたチケットを回収し、前をみると巨大な恐竜が...
子供たちが見たら喜びそうなリアルな作りです。
近づいてみると、どうやら映画「ジュラシックワールド炎の王国」の宣伝のために設置されているようです。
恐竜を眺めているうちに出発の時刻になり、電車に乗り込みます。
イギリスは日本と違い、2か月くらい前にチケットを予約しておくと、飛行機のように電車が格安で乗車することができます。
ちなみに朝5時台のこの電車、一等席を予約しても、当日普通席を買うよりも遥かに安いです。
その上、一等席では朝食がサービスで提供されます。
しっかりと温められたものです。
ホテルの部屋でインスタント食材や冷えたサンドウィッチを食べるよりもよっぽど美味しいです。
この後一日中歩き通すこととなるため、ここでしっかりと胃袋にエネルギーを充電しておきます。
少し仮眠でもしようかと目を閉じたのですが、結局眠れず、ずっと羽田空港で買った本を読んでしまいました。
7時過ぎに電車はニューアークノースゲートに到着。
予約してあったタクシーに乗り込み、会場に向かいます。
さすがにロンドンから遠く離れたここまで来ると、この早朝でウーバーでは車は見つかりそうもありません。
7時25分には会場に到着。
すでに開場されており、どんより曇の下、たくさんの業者たちが荷開きをしています。
昨日会った和骨董屋さんたちもすでに買いに走っています。
私は広い会場の中散らばっているディーラーたちの位置が大凡頭に入っているので、馴染みのディーラーたちの所から見て回ります。
それぞれの業者の荷開きの時間が異なるので、それを計算しながら次に行く店を決めていきます。
途中、建物から建物へ移動している中、知り合いのディーラーたちとも顔を合わせます。
彼らとはお昼頃にレストランで集まり、その日買い付けた品々を交換したり、譲ってもらったりするのです。
いわゆる即席の交換会です。
また、お互いの成果を見せ合うところもあるとも言えます。
この時期のニューアークは一年の中でも最も気候が良いため、出店者も一番多いです。
冬には出店していないディーラーもいるので、久々に会う人たちもいます。
そのため日本からも多くのディーラーが来るのですが、それでも今回、予定以上に多くの買い付けができ、順調に進んでいきます。
ここにはあまり高額の物はありませんが、ロンドン市内では買えないような割安の珍しい掘り出し物などが隠れています。
とにかく足と目を駆使し、細かく並んでいる商品を見ていきます。
私のようなジュエリーを主体としているとそうしていると、長い時間がかかります。
けれど、工芸品や特に東洋骨董を扱う業者さんは並んでいる数も限られているため、見て回るのが早いです。
彼らはもう10時過ぎにはほぼ仕事を終えてしまい、11時には帰ってしまいます。
以前は仕事を終えるまで休むことなく回っていましたが、最近はさすがに体力も落ちました。
レストランで落ち合ったディーラーたちとの交換会の後、昼ご飯を取ることにしました。
グレイビーソースをかけてもらったミートパイで再度栄養補給。
イギリスのミートパイはつい美味しいわけではないのですが、注文してしまいます。
あの時味わった味が懐かしくつい食べたくなってしまいます。
あの頃とは比べ物にならないほど、体力は落ちていますが、
さぁ、もう一回りしましょう。
更にもう一周して歩くと、見落としていた品がいくつか出てきます。
こうした地方のアンティークフェアではカードはほとんど使えないので、決済は現金のみです。
防犯上の問題と予算の事もあり、決めておいた額だけのキャッシャを持ち歩くようにしています。
この日のキャッシュも丁度底をつき、後はポケットにある少額紙幣だけになりました。
荷物を回収し、バスの停留所に向かいましょう。
バスを待つ私の前には羊たちがのどかに佇むイギリスらしい景色が広がっていました。
まだまだ旅は続いていきます。