到着した日の夜は、寒さで夜中、目が覚めてしましました。
ホテルの掛け布団は夏も冬も同じ薄い物。
乾燥で喉を傷めないために、暖房を切って寝たのですが、想像以上に寒く、目が覚めてしまいました。
ロンドンのこの季節がやってきました。
つい夜景がきれいであったため、カーテンを閉めなかったことも悪かったかもしれません。
靴下を履き、予備に持ってきてあったスウェットをもう一枚着て再び布団にもぐりこみました。
日本のホテルでは加湿器を貸し出してくれますが、海外のホテルではまず置いてあるところはありません。
そのため冬のヨーロッパでは冬には暖房を付けて部屋の温度を上げ、乾燥を防ぐため、バスタブにお湯を張り、濡れたタオルをかけます。
こうすれば湿度を保ちながらも寒さを和らげられます。
翌日からはそれを思い出し、カーテンと暖房を使用しました。
買い付け初日はいつも通り、アポイントを取っておいた業者のところを順番に回っていきます。
この日は晴天。青空が広がっています。
「見て、とってもきれいなサニーデイ!」
とあいさつ代わりに馴染みのディーラーに言われ、改めて空をみます。
気温が寒いですが、冬は空が青く美しく映えます。
最近のイギリスのアンティーク事情などについて話しを聞きます。
やはりポンドのレートが安いこともあり、アメリカや他のヨーロッパ諸国の人が買いに来るため、
街の景気は悪くてもアンティークジュエリー業界は悪くないようです。
けれど、売れるのはいいが、商品がなかなか集まらない、見つからないと話していました。
マーケットやオークションを訪れていて肌で感じるのですが、中国人の趣向が変わってきました。
具体的には、ここ3年で急激に日本人の好みと似てきた。
日本の速度の数倍の速さでアンティークジュエリーの深い世界へと中国人たちが入ってきたということです。
ただ、実際に買っている姿を見かけても、やはり「買いが甘い」と感じます。
私が買うのをやめた商品でも買っていきます。
それは値段ではなく、傷や直しがあったから購入を中止した物です。
確かに2,3年で鑑識眼は身につくものではないですが、気付いていないのかそうした物も買っていきます。
それでも、中国人ディーラーの数は年々増え、今や遥かに日本人よりも多いです。
その上、10,000ポンド(140万円)以上の品でもどんどん買っていきます。
今、日本人ディーラーで10,000ポンド以上のアンティークジュエリーを買っているのは数限られたディーラーだけです。
和骨董や工芸品などでは10,000ポンド以上を扱っている元気な日本人ディーラーもたくさんいますが、ジュエラーでは少ないでしょう。
中国人ディーラーの買いの強さを見ていると、「物も無くなっていく訳だ。」と思います。
しかし何人かのこちらのディーラーたちと話していて共通していたのは、日本と違うのは中国では流行り廃りが早いということ。
4,5年前は珊瑚や琥珀、象牙だけを買っていた印象でした。
中国国内のマーケットで人気があったからです。
それが今は終わり。
象牙は中国国内でも扱うことが難しくなり、徐々に扱うディーラーが減り、今は中国人もほとんど買わなくなりました。
琥珀はブームが終わり、値段が半分以下に。
ロンドン中心部にあった琥珀専門店もいつの間にかに消えていました。
珊瑚はまだ売れているようですが、かつてのような勢いはありません。
それでも一度値段が上がってしまった珊瑚はイギリスのアンティークマーケットで高い値段のまま推移しています。
そして今はジョージアンが特にブームだそうです。
私も手の込んだジョージアンのジュエリーは好きなのですが、そうした通好みの物を彼らは漁っていきます。
世界各地の海で底引き網でごっそりと魚など海洋資源を強奪していく中国漁船のようです。
日本人漁師さんの気持ちがわかるような気がしてきます。
ただ、先ほども書いたように買いが甘いこと。
彼らはリプロダクションや壊れているものも買っていくこと、
そこに、まだまだ私が入りこめる隙間があると思います。
しっかりとした物だけに狙いを定めて選び買っていくようにするしかないでしょう。
そして、「このブームは長続きしないよ。」
とイギリス人ディーラーたちは話していました。
眼を鍛えて良い物をやっていくのみです。
日本のマーケットも二極化が激しいと感じています。
かつてのようにたくさん数が売れる時代から、本当に良い物だけが売れる時代へと変化していることを感じます。
ネットなどでも簡単に物を買える時代、だからこそ、時代のある物をしっかりとやっていくことにアンティークディーラーの生き残る道があるのではないでしょうか。
旅行先や駐在員の奥様から購入したという品を見せてもらうことも多いのですが、リプロダクションがかなり多いです。
傷つけるつもりはないので余計なことは言わないようにしていますが、やはりそうした物がヨーロッパのマーケットでもたくさん出回っています。
この業界の大先輩からいただいた言葉に、
「高い物には高い理由がある。安い物には安い理由がある。相場よりも半額以下とか極端に安かったら疑ってみた方がいいよ。」
というものがありました。
今回も慎重に選んでいきたいと思います。
<
/p>