翌朝、いつも通り明け方には目が覚めてしまいます。
早めの朝食を済ませ、街に出てみます。
もちろん、まだ、お店はどこも開いていないので、海を眺めに、コメルシオ広場に行きましょう。
リスボンは坂が多く、下ったかと思えば上り、まだ、下る。
ウーバーで呼んだ車は、海へと向かいます。
広場に着くと、ちょうど通勤時間帯のため、地下鉄の駅からは多くの人が溢れてきます。
こんな駅は20年前にはあったかなぁ、と思いながら、広場を眺めると、
広場もかつてとは違い、随分ときれいに整備されています。
当時は、周囲に古くからあるカフェが並び、そこのカウンターや柱は長い時と人の肌に触れてきていい味を出していました。
そのカウンター中に立つおじさんの顔には深い皺が刻まれ、全てを包み込んでくれるような笑顔があったのが思い出されます。
「ドイツ ピッカ ポルファボール」
二つコーヒー(エスプレッソ)をください。と口にしていたのが残像のように浮かびます。
かつて短い滞在ながらも何度か訪れたそのカフェを捜し、石畳の上を踏み歩きます。
しかし、どこもモダンなチェーン店などに回収されてしまっており、あの海風と時に磨かれた懐かしのカフェは見当たりません。
広場周辺は再開発でガラッとその雰囲気を変えてしまっていました。
この日も、一つのお店が、工事をしていました。
入り口のアーチはそのままながら、中をすっかり壊し、スケルトンになっていました。
広場の先には海があり、指先で波に触れてみます。
海水を手に取ると、潮の香りが20年前とそして大航海時代とも変わらずにそこにあることを感じさせてくれました。
思い出は、記憶の中にだけ残ればいいのかもしれません。
世界は動いているのですから。
気を取り直し、教会とお城を見学しに行きましょう。
教会はイギリスやフランス、ドイツなどの教会とはまた異なった雰囲気です。
スペインや中南米の教会に似ているのは地理的や歴史的なものとして当然でしょう。
私はキリスト教徒でありませんが、神社仏閣やモスクなどを訪れる時とは変わらず、敬意を持って挨拶と礼を心で言い、後にしました。
坂を登っていくと骨董屋も何軒かあります。
まだ、開いていませんが中を覗くと、うむーーといった感じです。
お城はまだ早い時間帯にもかからず、次第に観光客が増えてきました。
私は、ガイドブックに載っていた「ユリウス・カエサルの時代に築かれた・・・・・」という文句に惹かれ、来てみたのですが、
どこにもカエサルいや古代ローマの名残を感じることはできません。
併設されている博物館の中にも粉々に破壊されたようなガラス器や陶器の破片、コインまでもが小さく粉砕されていました。
やはり、お城という敵の攻撃にあう要地であり、古代より様々な宗教が入り乱れ、戦争を繰り広げられてきた地にある城であるため、こうして城壁以外は何も残らなかったのでしょう。
城壁には昇ることができ、ここからリスボンの街や海を眺められます。
かつてはここから大砲で海から迫る敵船に砲弾が撃ち込まれていたのが伝わってきます。
きっと、観光客がこんなに溢れていなければ、シリアのクラクドシュバリエやイランのバム城のような中世にタイムスリップさせてくれるような空気がそこにあるのでしょう。
お城の敷地内には孔雀がいて、サービス精神旺盛なのかずっと羽を広げて観光客たちを喜ばしていました。
お城を出ると、有名なエッグタルトのお店があったので、ここでピッカ(エスプレッソ)と共にエッグタルトをいただきます。
他の欧米の国のお菓子と違い日本人にはサイズも程良いです。
そろそろ骨董屋も開店した頃でしょう。
骨董街へタクシーで向かいます。
事前に調べてあった通りに向かいます。
ここでもタクシーの窓から何軒か良い雰囲気の店が見えましたが、
運転手は初めに伝えたところまで、車を走らせます。
車は国会議事堂前に到着。
道を歩いていくと、
骨董屋ならばまだいいのですが、ただのリサイクルショップみたいな店までもが並んでいます。
国会周辺にこうした店があるなど日本ではとても想像もつきません。
家賃が意外にも安いのでしょうか。
それでも中にはセンスの良いギャラリーなども並んでいます。
現代宝飾のお店はありましたが、しっかりとしたアンティークジュエリーを扱う店は見当たりません。
銀製品はデコレティブでイギリスの銀器に慣れた日本人には難しそうです。
工芸品はポルトガルゆかりの物はいい値段がするのですが、意外にもフランスやドイツなど他の国で生産された品には抜ける物がありました。
これまでもイタリアやドイツでガレやドームが安かったことやフランスでマイセンが安かったことなど、他国の物が相場よりも安いという事があります。
眼さえあれば世界どこでも抜ける物があるのが骨董探しの楽しみでもあります。
その後先ほどタクシーから目にした店にも何とか地図を見ながら辿り着きました。
やはり、ジュエリーはガラクタばかりでしたが、ここでも抜ける品を発見。
人形などもありましたが、これは流石に私の守備範囲ではないので、遠慮させていただきます。
店主に聞くと、もう、ここで30年以上骨董屋をやっているそうです。
品物は皆ポルトガル国内で集めているというこでした。
世界中どこも首都にはアンティーク屋はあるものです。
価値ある品々が埋もれ、捨てられることなく、次世代へと受け継がれていく場所。
それがこうしたアンティークショップなのでしょう。
途中、立ち寄ったお店に何軒か面白いお店がありました。
一つは、缶詰屋。
色とりどりの様々な缶詰が置いています。
イワシ、サンマ、アジ、マグロ、トビウオ、タコ、イカetc…..
包装のデザインもおしゃれで何個もほしかったのですが、
手に取ると重い。
仕方なく、二つだけ購入。
後に空港内で同様の缶詰をみたら、3,4倍の値段で売っていて驚きました!
上が空港内の店です。
二つ目は、紅茶のお店。
ガイドブックにも載っていたのを見ていたのですが、たまたま、歩いていたら遭遇。
ヨーロッパ最古の茶園から採れる茶葉を使った伝統のある紅茶屋さん。
ここにお兄さんがまた、親切な上、たくさん注文し、値引きの交渉をすると、予想よりもかなり負けてくれるはでありませんか。
店内の雰囲気もクラシカルで落ち着きます。
なぜかひな人形が飾ってありましたが。
三つ目は街の食堂。
一度12時過ぎに店の前を通った時にはまだ席もあり空いていたのですが、
「この店は美味いに違いない。後で来よう」と、目星をつけておきました。
しかし、13時前に再び行くと、満員。一つだけテーブルが空いており、何とか入れてもらいました。
周囲で食べている人のお皿や出てくる料理を見ていると、ものすごい量です。
そのため、ビールとイワシのみ注文。
しかしイワシの炭焼きは5匹も!出てきました。
これがまた、旨い。
白いご飯とお醤油がほしくなります。
魚介類が美味しいという記憶がありましたが、
やはりおいしい。
薄味ながらも火加減が抜群で中は柔らかく暖か、イギリス人も修行に来てもらいたいものです。