9月の初めのポートベロー、朝5時過ぎにウーバーを使いホテルから向かいます。
まだ、星が空には出ており、街灯の灯りが通りを照らしています。
この時間はまだ日本からのディーラーに姿はまだ見えません。
それでもやっぱり早い。こんな時間というのに、和骨董の現地に住む日本人スタッフの女性がこっちに向かって歩いてきます。
「おはようございます。早いね。」
挨拶を交わし簡単な立ち話をします。
日本から持ってきていたお土産を渡します。
彼女を雇っているオーナーは今日本に帰っているにもかかわらず、真面目にポートベローに朝一から来ていました。
彼女もこちらに来てもう3年くらいになるでしょうか。
初めて会ったときは社長の後を付いて見習いとして回っていましたが、今では一人で地方や海外のフェアやオークションを回り掘出し物を買い付けています。
目利きでヤリ手の社長の下で修業し、その上向上心を持っているので普通よりも何倍も成長が早いと感じます。
以前一緒に皆で飲んだ時には
「こちらにワーホリで始め着た時にはやりたいこと等は漠然としていて、何となく縁でこの道に来たんだけれども」
「今は、いずれ海外か日本で、自分で骨董の仕事に就きたい」
と話していました。
今後いつまでこちらにいることになるかは分かりませんが、
将来、活躍している姿に会うのが楽しみです。
5時半、6時、6時半となり、次第にインドアのマーケットも開いていきます。
それでも、開いているスタンドの数が少ないです。
やはり、まだ9月初めでは買い付けに来るのが早すぎたのでしょうか。
ちらほらと日本人のディーラーも現れ始め、
「買えた?」
「いや、まだ、一点だけ」
「やっぱりまだ早かったかね。この時期」
などと言葉を交わします。
そして次に開くビルに向かいます。
7時となりロジャースギャラリーが開き中に入りましたが、いつも来ている業者の3分の1くらいはお休みのようです。
南欧でも行って終わりかけている夏を惜しんでいるのでしょうか。
8時にはジュエリーが集まっているビルに戻ると、多くの人で賑わっています。
久しぶりにあるディーラーたちと握手を交わし、互いの夏休みのことなどを話します。
南仏やスペイン、シチリアなど地中海沿いの暖かいところに行ってのんびりしてきた人たちが多いです。
私も娘とカヌーや乗馬、トレッキングなどを楽しんだ話をします。
皆、娘のことは覚えており、「今ではもう高校生になって、166cmもあるんだよ。」
と話すと、
「泣きべそをかいていて、小さかった子がと」
驚きます。
私も他人の子と言うのは本当成長が早いものだとよく感じます。
そうした中、初出しの物を優先的にこちらに見せてくれます。
さすがに、6月からこちらには来ていなかったので、商品も結構変わっています。
ルーペを使いながら、良し悪しを判断していきます。
そして気になる品があると値段を尋ね、改めてルーペで確認します。
そうして何軒かで仕入れを続けていると、時計の針も進み、10時になっていました。
そろそろ次に行かなくてはなりません。
この日、別の場所でオークションがあったので、先輩の業者と一緒にウーバーで向かいます。午前中に下見があり、すぐに午後からオークションが始まります。
車を使い30分程で会場に到着。
すでに多くの人で賑わっています。
リストをもらい、自分の探している物がないか確認します。
頼まれていたユリウス・カエサルやアウグストゥス、五賢帝の金貨や銀貨もどうやら出品されるようです。
わくわくしながらオークションのスタートを待ちます。
マルクス・アウレリウスやカエサルの金貨がオークションにかけられます。
私は100万円以内であったら落札しようかと思っていたのですが、あっという間に値は上がり、とても追いつけません。
やはり、古代ローマやギリシャの金貨はこれだけ円高ポンド安の中でも値段が崩れません。
また、古代ローマ・マニアが多いイギリスでは却って日本よりも相場が高い傾向があるのかもしれません。
それでも今回狙っていたカエサルとアウグストゥスの銀貨は予算内で落札することができました。
アウグストゥスがアクティウムの海戦での勝利を記念して発行した銀貨やカエサルの横顔を表面にした銀貨などが手に入りました。
アクティウムの海戦とは紀元前31年にオクタビアヌス(アウグストゥスという称号が贈られる前の名)派がクレオパトラとアントニウスの連合軍をイオニアイ海のアクティウム沖で破った戦いです。
その他にも数枚の古代コインを入手することができました。
その後、先輩たちとベイズウォーターにある行きつけの中華料理屋に向かいました。
こちらでは一人では中華料理を食べに行きにくいですが、三人揃うといろいろと頼め楽しむことができます。
名物である
ロブスターヌードルも注文しました。
食事は終わりましたが、飲み足りないのでパブに出向き、ビールを味わうことに。
結局遅いお昼ごはんを食べていたのが夕食の時間までパブに滞在していたため、この日は夕食を抜くことになりました。
部屋に戻ると眠気が襲ってきます。
けれど書類作成と商品の仕分けにほとんど手を付けていなかったため、眠気と酔いに負けずに、作業にかかることにしましょう。
酔いもあるため、なかなか作業は進みませんが、何とか、この日、仕入れた分とパリで仕入れた品の仕分けを終えました。
時計をみると、すでに午後10時。日本時間の午前5時です。
そろそろ娘も起きてくる時間かと思い電話でも掛けようかと思ったのですが、この日は日曜日。
学校がないのできっと遅くまで寝ているでしょう。
電話は諦め、日本から持ってきていた小説に目を通していたら、自然と眠りに入っていました。
こんな素敵な三日月のブローチも二点仕入れました。