パリからロンドンへ

満腹のお腹を抑えながら、クリニャンクールから北駅のホテルまで地下鉄で移動します。

 

駅前の定宿に着くと、スーツケースを受け取り、今仕入れて来たばかりの工芸品をスーツケースの中に仕舞います。

予定通りにうまく収まり、ずしりと重いスーツケースを抱え、駅に再び向かいます。

 

少し余裕を持って午後2時43分発を予約しておきました。

 

ユーロスターの看板に従い、エスカレーターを昇ると、ホームを見渡せるデッキとなっています。

 

昔から変わらないイギリスへの出発地。

北駅。

 

ここから駅を眺めるとたくさんの人々とここで、さよならをしてきた記憶が甦ります。

 

 

チェックインをしようとすると、

「こんにちは」

驚き、見上げると、

背の高い係員の胸元には、スペインやイギリスの国旗と並んで小さな日の丸が飾られています。

 

どうやら日本語を話せるようです。

 

異国で思いもかけず、現地の人から日本語で話しかけられると、うれしいものです。

 

彼と簡単な日常会話を交わし、気分良く出入国手続きへと進みました。

 

まだ、出発まで時間もあるせいか、空いており、どの係員も皆大変親切です。

 

同時多発テロが起きてから、海外でこれほどまでに出入国の係員に親切にされた記憶はなかったような気がします。

 

荷物検査のところにいた係員も片言の日本語で

「元気ですか」

「あそこにいる私の友達、筋肉バカ」

などとマッチョな係員を指さし、

「お仕事ですか」

「どこからですか?」

「気を付けて、さよなら」

と話され、つい笑顔がこぼれます。

 

前回は工芸品の梱包をここで開封させられ大変な思いをしたので、

あまりの違いに拍子抜けしました。

 

待合室を進むと、チョコレート屋さんが目に入ってきました。

 

いつも素通りしていたのですが、看板をみると、

「アランデュカス」

9月の仕入れの時にアランデュカスで食事をしていたためか、初めてその文字が目に入ってきました。

 

 

レストランのデザートでいただいたチョコレートが美味しかった記憶もあり、

懐かしさと共に少しお土産で購入しました。

 

おまけに頂いたチョコを口に入れて、椅子に座ると、

特徴的な髪形の先輩日本人ディーラーが近づいてくるのが目に入ってきました。

 

先輩の名を呼び手を振ると、気付いてくれました。

 

先ほど、クリニャンクールでも何度もお会いしたフランスアンティークを主に扱う先輩です。

 

荷物を移し、隣に座ってもらいます。

 

出発まで最近のパリやロンドンのアンティーク業界の話をしているとあっという間に時間は過ぎ去っていきました。

 

 

走り始めて10分ほどすると、都市部から畑や草原が広がる景色へと変わります。

 

住宅やビルがいつまでも続く東京近郊の景色とは全く異なるものです。

 

晩秋のこの時期、木々は紅葉し色鮮やかな風景が続きます。

黄金の木々と空の青さの対比が美しいです。

 

 

出発から1時間30分程走ると、やがて電車は海底トンネルへと入ります。

ドーバー海峡を地底深く入り、越えていくのです。

 

 

トンネルを抜けると、そこには先ほどまでとは全く異なる空が広がっていました。

 

ああ、イギリスに来たんだなぁと感じられる空。

そうあのどんよりとした雲に覆われたいつもの空が広がっていました。

 

電車で少し走っただけの距離なのですが、

そのわずかな距離で、

フランスとは空の高さが違ってしまいます。

 

パリも舞台にしている左岸という小説を読んでいると、

いつの間にかに風景は都市部のものへと変わっていました。

 

車内にはキングスクロス駅への到着が近づいているアナウンスが流れます。

 

また、日常に戻ってきたような気がします。

 

電車を降り、ゲートを出ると、そこにはいつもと変わらない「駅ピアノ」が人々に囲まれていました。

 

明日はポートベロー、早朝から向かわなければなりません。

体を休め、体力を回復させましょう。

 

いつもの馴染みの宿に向かいます。

 

部屋に着いた時には日が落ちたところ。

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ハイドパークの木々たちも黄色く紅葉している美しい季節です。

 

 

 


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